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ほんとうにあった意味がわかると怖い話

いつにも増して緊張をしていた。

やってることはいつもと変わらない。

ただ、手にするというだけでいつもとまったく違う感覚になる。

ご丁寧に事前説明があった。

どうやらあいつに触れる必要はなさそうだ。

 

信じられるか。

 

あんな傾斜だ。材質だってつるつるしている。表面が濡れている可能性も大いにある。万が一滑り落ちてしまったらどうする?

手を突っ込めてか。

冗談じゃない。

百歩譲って自宅ならまだしもここは上野駅だ。しかも午前8時をまわったところ。まわりに人がたくさんいるのは気配でわかる。隣を見ることはできないが唸り声が聞こえる。あぁはなりたくない。

できれば優雅な気分で事なき終えることを望んでいたが現実はこんなもんだ。幸い隣人とは違って状態はいい。

いや、何も解決していない。

バッグから試験管を2本取り出した。

表面にシールが貼られていた。シールの文字はそれぞれ赤と青で間違えないように分けられている。

赤は前回使用したものだ。

今日は青だ。

誤って赤を開けたりしてみろ。

死人が出るぞ。

まあここなら被害者は俺一人で済むがな。

1本は自宅に置いてきてもよかったのだが家には同棲中の彼女がいる。

彼女は綺麗好きで部屋をすぐ片付けたがる。これが見つかった時、もし彼女が間違って開けてしまったときのことを想像したら、、、

これはやはり俺が持っていた方がいい。

彼女のことを愛しているがこの一件において無関係だ。知らない方が彼女のためだ。

 

さてと、さすが専用の試験管だ。

蓋を開けなければ無臭だ。

ひとまず台の上に置いておこう。

迷いが最後まであった。

どうしたらいいんだ。

こんなとき自分の優柔不断さが嫌になる。

その時だった。

予想外に時間が猛スピードで動き始めた。

気付けば頭が出てるじゃないか。

確認したわけではないが長年の勘でありこの感覚はほぼ間違いないだろう。

ここを逃したら今日はもう無理かもしれない。

チャンスは一度だ。

当初の説明は無視した。

俺はBプランでいく。

念のため紙を左手にして私は行動に出た。

あいつも出口から飛び出した瞬間を襲われるとは思わなかっただろう。

俺は鬼の形相で襲撃した。

為すすべもなく、俺はあいつの頭をもぎ取った。

こんな瞬間を俺は彼女に見せられない。

左手を通して伝わってくるあいつの柔らかさ、温もり、そして匂い。

何もかもが嫌だった。

いつかの上司が言っていた。

「すべて自分のためだと。」

俺はこんなことをするために生まれてきたんじゃない!

こんなことしたくなかった。

今は考える暇はない。

ここから早く脱出したい。

そう、俺はあくまでも会社員なのだ。

トイレに行くといって抜け出したもののそろそろ戻らないと他の社員に怪しまれる。

急ごう。

人に見られないように、右手で試験管のふたを開ける。

ここは集中だ。

息を止めて両手を使いあいつの一部を採取した。

そして試験管の蓋を締めた。

これさえ手に入れば用済みだ。

嫌なことはすべて水に流そう。

俺はバッグにしっかり2本の試験管をしまった。

すぐに手を洗った。

人通りが多いが気にしなかった。

左手が汚れた気がした。

とにかく念入りに洗った。

そして、その場を立ち去り

同僚たちと合流した。

何食わぬ顔で俺は接客をしている。

俺が今してきたことは誰も知らない。

明日この2本の試験管を持って健康診断へ行く。

左手がまだ震えている。

 

 

 

 

 

 

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